痛みの最大の元は筋膜(FASCIAファッシァ)に存在します。
筋膜とは、頭のてっぺんからつま先まで縦につながる組織で、何層にも重なり袋状に筋肉や内臓を包みこみます。この筋膜は70パーセント程度コラーゲンを含む伸縮性に乏しい組織です。ストレッチなどでスジを伸ばした際、ピーンと張ってそれ以上伸ばすと痛みを感じますが、その時まさに筋膜の張力を感じているわけです。
筋膜は、骨格のバランスをとるテントの張りのような役割を果たすもので、筋膜が歪めば、その歪みのなかで筋肉や内臓が機能するしかありません。またファッシァ(筋膜)は、靭帯や腱などと呼び名は変わっても同じ組織で構成されており、骨膜や動脈も発生学的には同じ組織に属します。
これら組織に共通する機能は、身体を支えると同時に、非常に感受性の高い痛みを感じるセンサー受容器(レセプター)を豊富に持っているということです。骨折して痛むのは骨ではなく骨膜であり、動脈炎や筋膜炎は耐え切れない痛みを伴います。これらはいずれも発生学的に中胚葉由来の組織で、脳や脊髄を包む「硬膜」も同じ発生から由来します。
症状を治療するのに、これら筋膜(FASCIAファッシァ)や硬膜がとても大切なポイントになります。この組織が緊張したり癒着をおこせば、その部分に痛みやコリ、違和感を起こす他に、そこの緊張部分が離れた場所にも関連痛を引き起こし(中臀筋から下肢へ坐骨神経痛様の関連痛や、側頭筋による非菌性歯痛などいわゆるトリガーポイント疼痛パターン)、身体バランスを崩す原因ともなっている訳です。そうなれば内臓も機能できなければ、良い運動パフォーマンスも期待できません。また、筋膜繊維の中を経絡(気の流れるライン)が通り、神経や血管やリンパ管もまた筋膜に張りついていますので、いかに筋膜を整えることが症状の改善に重要かおわかりいただけると思います。
筋膜の異常は、皮膚の上からピンポイントに存在していたり極めて細いライン状としても触れることができます。そこは経絡上の邪気として表現され、そこに最適の圧で刺激されたとき、深部に響く感覚と気持ちよい痛みが生じ、邪気が取り除かれ気が通りだします。これがトリガーポイント療法です。
また、PNFによるコントロールされたストレッチでも筋膜の異常を術者はレスポンスとしで感じ取り、それを繊細に除去していきます。これがPNFの筋整合法となります。
筋膜の異常はその上の皮膚に異常をきたすため、その皮膚がゆるむ方向にわずかに動かし、筋膜をリリースする方法もあります。
また、症状改善に動脈のリコイル(メカニカルリンク)や、硬膜に対する頭蓋や仙骨へのアプローチ(CSTなど)も必要になる場合もあります。
いずれ、身体の構造を支え、痛みのレセプターを豊富にもつこの筋膜(ファッシァ)組織を正常に戻すということが、構造学的にも、東洋医学的にも精神構造や運動パフォーマンス的にも非常に大切なのです。では、何故このような身体バランスをくずすのか、また筋膜に異常が発生する原因は何なのでしょうか?そしてその検査方法とは?
ケガや外傷や内臓の機能低下などが、ある部分の動きのベクトルを変えると重力下のもとでヒトの身体は一定の基準でねじれてバランスを取り戻そうをします。そのアンバランスを完成させる組織が筋膜(ファッシァ)組織であり、その筋膜が緊張したり引き伸ばされることでひどい痛みやツッパリ感やコリの原因になっている訳です。
つまり、何年も前に負傷したケガが痛みも消え治ったと思っている場所、内臓の機能低下を起こし臓器の動きが喪失したところ、先天的または後天的にある関節の靭帯に負荷がかかり関節の負担が大きいところ等、こういった原因箇所を探すことが症状を取るための重要な診断になるわけです。
その検査には患者さんの筋力や、代理人の筋力を使います。症状を引き起こす原因になっている異常部位は、そこに痛みがなくともその皮膚上に細胞レベルでの電子配列異常が存在するため、そこに生体のもつ最も感受性の強い手のひらを当てると筋力が落ちたり、または術者が優しく触れると持っている症状が軽減したり、指標とする関節の可動域が広がるなどの明らかな反応が出現します。ただし筋力検査の際は、術者の豊富な身体メカニズムへの認識と、明確な設定による身体への問いかけが必要となります。
筋膜組織はテンセグリティー構造と呼ばれるスポンジ状の構造でできた膜が何層かに渡って身体の全ての袋状に縦につないでいます。この膜組織が正常に機能することで、リンパ液をはじめ、血液、細胞間質液、脳脊髄液そして経絡を流れる気もしくはエネルギーがよく流れはじめるわけです。骨格構造(骨盤・各関節)を整えると、筋膜組織は正常化していくし、また筋膜組織を整えても骨格構造は正常化していきます。そして縦の筋膜組織に対し、バッファー的な役目をする横の組織である、骨盤隔膜・横隔膜・胸郭上口・舌骨・小脳テント・鞍隔膜も縦の筋膜組織に、特にリンパの流れに影響を与えるでしょう。
それと問題は内臓組織ですが、転倒や打撲による各臓器の影響は多くの問題の原因になります。水の入った風船を高いところから落とすと簡単に破裂して壊れます。人間の臓器にも同じように水分を包む柔らかい臓器がいくつかあります。腎臓・肝臓・膵臓・心臓そして頭蓋骨に包まれた脳も同じです。これら臓器は生きている状態では想像以上に柔らかいものであり、衝撃を受けると袋の中の水分(水は分子構造上最も密度が高く硬い物質)がそれを包む膜組織に大きな歪力をもたらします。その一部の歪み構造がテンセグリティー構造を通して身体のあらゆる場所に、痛みなどの症状を伴い影響を与えてしまうのです。
それでは、症状の原因となりやすい場所を考えてみます。まずは打撲を起こしやすい頭、肩、肘、手、助骨、背骨、骨盤、尾骨、膝、踵などがあります。(骨自体も水分を多く含んだ袋状の臓器の一種です)次に、転倒など衝撃エネルギーのポテンシャルが残存しやすい臓器ですが、先程説明した腎臓・肝臓・膵臓・心臓・そして脳(頭)です。ただしこれら臓器は、衝撃による歪力のほかに当然内臓本来が病気や身体の負担で悪くもなれば、他の臓器である胃・小腸・大腸・肺・胆のう・膀胱(東洋医学でいうところの臓に対する腑にあたる)、子宮、前立膜なども生活習慣や加齢により機能障害になります。
またこれらの臓器は、ストレスによる感情問題でさえ大いに影響を受けてしまうのです。怒りによる肝経や心配による胃経や悲しみによる肺経、恐れは腎経、喜び過ぎの心経などある感情は決まった臓器へのエネルギーを遮断してしまいます。いずれも、機能の低下した骨、関節、臓器に体表から手を当て筋力低下が起これば、症状がなんであれ原因となっているその部分を治療すればよいのです。(BASEなどによる治療)ただし、中には当然多くの原因ヵ所が存在しそれらが複雑にからみあい、長年の患いをもっている方もいます。そういったケースでは治療ごとに症状の改善と増悪を繰り返しながら解決までに時間を必要とするかもしれません。
最後に原因で一番やっかいな問題があります。感情ストレスが与える身体への影響です。この問題は、特定の臓器と筋肉、そして経絡へと一致したライン上に圧痛や筋硬結やひきつれを起こすので、診断にも応用(AKまたは経絡テストや経筋療法など)されます。治療は、内臓・感情・筋肉・経絡上の筋膜繊維は互いに関連しあうため、(例えば腎臓と恐れの感情と大腰筋と腎経の経絡との関連)これらのどれかが解決されれば他が機能しだします。深い感情問題があると非常に難しいケースもあります。いくつかの方法はありますが、勉強中です。ある人や感情に対するアレルギー(NAET治療)や、特定の出来事に対する感情が引き起こす重心バランスの異常としてアプローチする方法(CW療法)もあります。しかしやはり簡単ではないでしょう。
感情ストレスにおいて一番大事なのは、ストレスが今の痛みに影響を与えているということを理解することです。ストレスが自分の身体に痛みとしてのサインを出しているということに気が付けば「自分はそんなストレスに負けて自分の体にみずから痛みをだすほど弱い人間ではない。心の持ちようでこれくらいの痛みはみずから開放できるのだ」と思えるでしょう。この痛みから解放されたら何をしたいか明確にイメージしてもらいます。もちろんそれができればハッピーになれるイメージです。
痛みに真正面から向き合うことが大事だと思われます。現在の自分の体はこれまでの人生、歩んできたことに対する成績表です。よくよく考えれば痛みの原因に気づくことができるかも知れません。痛みは自分を変えるチャンスなのかも知れないのです。めまぐるしい情報過多の今のストレス社会の中で、さまざまな関わり合いに振りまわされ自分を見失いがちになっている可能性があります。思い切って環境を変え、価値観を変え、自分に向き合ってほしいと、身体はいろんなかたちで訴えているのかも知れません。
以上のように症状とトラウマなどが複雑にからむ場合は、潜在意識が知らない間に身体へ影響しているので、筋力検査により本人の意識に許可をとって施術に入りますが、身体がそれを拒んだ場合は、時期を待って出来るだけのこと、主に身体構造の施術で症状の軽減を図るしかありません。
「筋肉は記憶する」よく聞かれる言葉ですが、脳の無意識、トラウマ、感情や情動など自分の意思ではどうにもならないことを、筋肉は悪い意味で記憶してしまうようです。ある思いや出来事が、ストレス反応をして特定の筋膜繊維の緊張を結びつき、慢性の症状を作り出す。逆にいえば、特定の筋膜繊維の緊張が開放されると、ストレスに対応でき、トラウマから開放されることもありうるわけです。
前出のごとく、筋膜には気の流れるラインが存在します。ある色、音、湿度、匂い、人、動物などが昔の記憶と潜在意識で繋がった時、気の流れは知らぬ間に滞ります。エネルギーの遮断が起こるのです。トラウマを開放する手段として、身体に影響するこれら色、音などの諸条件、また実際にあったトラウマに意識をチューニングしながら、筋膜を整え気を流し、エネルギーを流すことで、顕在意識や潜在意識がトラウマにチューニングされたときに起こる身体の変調が解決(TFT思考場療法など)されます。つまり事実を忘れることはないが、そのトラウマを思い起こしたとき、感情にも身体的にも平気な状態でいられるようになるのです。
筋膜に対しやさしくアプローチしていくと、術者と患者さんとの間にえも言われぬ共感を得ることが度々あります。言葉を介さない、手と身体で織り成す深層での会話ともいえる感覚が共有できたとき、度々患者さんから深いため息がもれ、施術が終わった直後術者側にも妙に呼吸が楽になる感覚を覚えたとき、実感としていい治療ができたなと思うことがあります。
以上、筋膜に対する働きとその性状、そして重要性について説明していきました。痛みの原因そしてその傾向と対策として、施術する側また治療を受ける側も、筋膜という摩訶不思議精妙なものに対する意識とイメージをもっていただくと身体をより理解できると思います。
泉カイロプラクティックセンター 斉藤 三夫










